クリックできる目次
風俗営業を他人(法人)に承継できるのはどんな場合?
風俗営業者が法人の場合は?
風俗営業許可を持つ事業者が法人である場合は、風俗営業とともに風俗営業許可を他の法人に対し、会社法の分割又は合併の方法で承継させることができます(後述)。
他社又は他社の株主に会社の株式を譲渡する方法で会社ごと承継させるもありますが、この場合は分割でも合併でもないです。風営法の手続では役員変更などの届出が必要になることがあります。
風俗営業者が個人の場合は?
風俗営業者が個人事業者である場合は、その個人事業者が死亡した場合に限り、その相続人に風俗営業許可を承継させる方法がありますが、相続が発生した日(死亡の日)から60日以内に相続承認申請を警察署(公安委員会)に受理されなければなりませんので注意してください。
風俗営業以外の営業の場合は?
特定遊興飲食店営業も風俗営業と同様です。
風営法に定められた営業であっても、風俗営業と特定遊興飲食店営業を除く営業(例えば性風俗関連特殊営業など)では、法人の分割・合併または相続によって風営法上の立場を承継する方法はありません。
法人の分割合併による承継方法は?
会社法にもとづいて行う分割又は合併には4通りがあります。
新設分割による承継
風俗営業許可を保有している法人から新設会社に風俗営業の全部または一部を承継させる方法。
新設会社だけの判断で分割計画を進めることができるという面では気遣いが少なくて済む方法です。
M&Aに備えてあらかじめ譲渡用の会社としておきたい場合などに使われる手法です。
吸収分割による承継
風俗営業許可を保有している法人から、既存の別法人に風俗営業の全部または一部を承継させる方法。
営業を譲り渡す法人と譲り受ける法人が話し合い協同して手続きを進めるという点で注意点が多くなる方法です。
競合他社の一部店舗を買い取る場合などによく使う手法です。
吸収合併による承継
風俗営業許可を保有している法人を既存の別法人が吸収することにより風俗営業の全部を承継させる方法。
営業を譲り渡す法人と譲り受ける法人が話し合い協同して手続きを進めますが、法人をまるごと承継するという点では承継資産を分離しないでよいという点で配慮が少なめの方法です。
新設合併による承継
風俗営業許可を保有する法人を含む二社以上の法人が合併して消滅すると同時に、新設会社に風俗営業の全部を承継させる方法。
実際にはあまり使われてない手法です。
公安委員会の手続の注意点は?
法人の分割または合併により風俗営業を他社に承継させる場合は、分割または合併の法的効力が発生する前にあらかじめ都道府県公安委員会から、その分割または合併について承認を受けていなければなりません。
公安委員会による承認を受けないまま分割または合併により風俗営業を承継させてしまうと、風俗営業許可を失ってしまい、風俗営業を行うためには新たに風俗営業許可を取得しなおす必要が生じます。
分割または合併について公安委員会から承認を受けるためには、原則として、風俗営業所を管轄する警察署を経由して都道府県公安委員会に分割または合併の承認申請を行う必要があります。
この手続きでは、警察庁が定める目安として、土日祝祭日を除いて35日を要するとされています。
分割合併手続きと公安委員会の手続を統合したタイムスケジュールを慎重に検討して計画を立てる必要があります。一般的には、税理士、司法書士、行政書士が連携して行います。
☆参考資料 警察庁:モデル審査基準等の改定について(通知)
許可を取り直すのと分割合併とどちらがいいか?
会社法に関する詳しいことはここで述べませんが、合併や分割の手続は準備も含めると3か月程度の期間が必要です。
他社経営の風俗営業を承継して、それに必要となる自社名義の風俗営業許可を確保したい場合には、自社で風俗営業許可を取り直すのか、分割又は合併でよいのか、悩むことがあります。
新規に許可を取り直す場合は、保全対象施設など「場所の要件」の問題がありますし、パチンコ店の場合は許可申請中の遊技機の入替えや保証書の確保が困難な場合があります。
都道府県によっては、新規許可取得の際に承継対象店舗において一時営業を停止しなければならない場合もありえます。
分割又は合併の方法で営業許可を承継する場合は、対象店舗の営業は中断しないで手続きを進めることができます。
分割の承認申請における関係書類は?
- 分割承認申請書
- 分割契約書又は分割計画書の写し
- 分割後役員(監査役を含む)の氏名及び住所を記載した書面
- 分割後の役員(監査役を含む)の住民票の写し
- 分割後の役員(監査役を含む)の身分証明書
- 役員就任予定者の誓約書
合併の承認申請における関係書類は?
- 合併承認申請書
- 合併契約書(合併計画書)の写し
- 合併後の役員(監査役を含む)の氏名及び住所を記載した書面
- 合併後の役員(監査役を含む)の住民票の写し(本籍入り)
- 合併後の役員(監査役を含む)の身分証明書
- 合併後の役員(監査役を含む)の誓約書
申請の際の注意点は?
公安委員会に申請する際の申請手数料
分割及び合併の承認申請の手数料 ¥12,000
ただし、同時申請の場合は2件目から1件あたり3800円を加算
警察署に申請する前に連絡を
分割合併の承認申請はあまり件数が多くないので、警察署(特に地方の)の担当官にとってみると、ある日突然に書類を持ってこられるととまどってしまうことがあります。
事前に申請の予定を伝えておく方が無難です。窓口に出向いてもよいですが、電話で様子をうかがってからの方がよいかと思います。
分割または合併により承継させる際の注意点は?
注意点は案件ごとにいろいろありますが、一般的な注意点を以下に示します。
- スケジュールには余裕を持たせましょう。万が一、分割合併の効力発生日までに承認を得られないと重大な問題が生じます。証明書類の取得については早めに準備しておきましょう。外国籍の方の場合は証明書類の取得に思いのほか時間がかかるケースがあります。
- 書類の内容が全体として矛盾がないようにしてください。申請書に記載する情報は風俗営業許可証や、最後に手続した際の申請書や届出書と矛盾しないようにしましょう。
- 公安委員会に提出する分割契約書(計画書)においては、承継される風俗営業を特定できる情報を正確に入力しておきましょう。
- 役員変更などについて届出等の手続を適切に行っていることを確認しましょう。
- 手続き期間中に審査対象となる役員(監査役を含む)が引っ越しなどしないかを事前に確認しましょう。もし住所を移転する予定がある場合は事前に警察に相談した方がよいです。
- 効力発生後に風俗営業許可証の書き換え申請を行いますが、原則として書き換え申請手数料はかかりません。但し、効力発生後に営業所名について変更を行った場合には書き換え申請について手数料がかかります。
- 特例風俗営業者であった法人が合併により消滅した場合は、合併後存続し又は合併により設立された法人の代表者は特例風俗営業者の認定証を返納しなければなりません。つまり、特例風俗営業者の地位が消滅します。
- 手続とは別の話ですが、関連会社以外の他社から営業を買い取る場合には、過去の行政手続き書類、過去の違反歴、許可条件、その他の法的問題点を分析しておきましょう。営業を承継した後で想定外の問題が生じることがあります。
- 独占禁止法により、分割又は合併の効力発生前に公正取引委員会に届出を行うべき場合があります。
- 届出後に分割等の禁止期間が設定されますので、余裕を持って準備しましょう。
- このほか案件ごとに注意ポイントがありますが、地域ごとに異なる部分もありますので、気になる点は事前に警察に相談しておきましょう。
パチンコ店の場合
- 構造設備変更を同時並行で行いたい場合は複雑な手続きになりがちですので慎重に対応しましょう。
- 関連会社以外の他社から営業を買い取る場合は、<営業所の範囲>や周辺施設の状況を分析して問題点を事前にチェックしておきましょう。地域のよっては許可条件を付される可能性があります。
- 効力発生前後で遊技機に関する変更承認申請や認定申請を行う場合は、それらの手続き方法について事前に警察署と打ち合わせしておきましょう。
- 風俗営業許可証の書き換えを急ぎたいが登記完了が間に合わないというケースがパチンコ店ではよく置きますので、その点も警察署と事前に協議しておきましょう。
- 認定機を承継させる場合にはそれなりに注意しましょう。
簡単電話相談(有料365日夜間も対応)
ココナラの以下の案内ページから、ココナラに登録いただいた方にご利用になれます。
1分ごとの有料相談です。金額は時期によって若干変更されます。
こちらをクリックしてください。
経営者目線で業界の裏まで ネットでとれない特殊情報とノウハウ